女ひとり 定年退職後の日々の暮らし

いつか行ってみたかった場所、いつかやってみたかったこと。その「いつか」が「いま」となり、実行に移す日々を綴ったもの。

退職して思うこと(5)~ セクハラおやじ撃退!

外資系企業といっても、働いているのは日本人の男性です。会社の制度としては平等でも、現場はそうもいきません。セクハラという言葉もなかったころです。90年代半ばまで、女性を年齢でからかったり、バストが大きい人を揶揄したり、ということは日常茶飯事でした。


中でも笑って済ませるには許しがたい、しつこいオジサンが職場にいました。20代後半になると、飲み会のたびに、年齢のことやシングルでいることをからかわれました。周りの男性や上司も、いっしょになって笑っているばかりです。


このまま言われっぱなしでは何とも許しがたく、あるとき反撃に出ることにしました。相手は、女性が気分を害していることなどお構いなしの意識でいます。単に「やめてください」では伝わりませんから、パンチのある「ひと言」を考えました。


そのオジサンが言われて本心から嫌なことは何だろう。どうやら髪の毛が薄いことを内心、気にしているようです。本来、他人の頭髪事情などどうでもいいことですが、ここは、掟破りの手を使わせてもらいましょう。本気で、こちらが不快に思っていることを示すため、仕方ありません。

次の宴会の席で、案の定、いつものように、面白半分に目を光らせながら、年齢のことをからかってきました。「お前、もうすぐ三十だろう、へっへっへ!」


その瞬間、彼の方を見据えて、「あたし、いくつになっても〇〇ないもん!」と、あらかじめ捻り出しておいた、ひと言をぶつけました。


狙い通り効いたようです、見る見るうちに彼の目から力がなくなっていくのが分かりました。場は一瞬、凍り付きましたが、誰も何も言えません。そしてそれっきり、オジサンは、飲み会の席でも、失礼な言動でからんでくることは無くなりました。


その人は、製品の安全認定をするのが仕事でした。私がプロジェクトリーダーとなり開発した製品に対しても、本来、安全性を見てもらわなければなりません。しかし、あえて彼のところには持ち込まず、わざわざ他事業所の安全認定の方に頼みに行ったりしたものです。当時の男性上司からは、こちらが周りとうまく仕事できないヤツだと言われたりしましたが、ここは譲れません。


その後、数年を要しましたが、世の中でセクハラが問題として、広く認知されるようになりました。職場の同僚からも「セクハラおじさん」のあだ名を付けられ、彼も反省したようです。自分から進んで、私の担当する製品を見てくれるようになりました。お互い当時のことに触れることはありませんでしたが、何となく協力体制ができました。


振り返ると、女性が社会で働く上でのさまざまな支障は、こうして、ひとつづつ時代が解決してくれたように思います。