女ひとり 定年退職後の日々の暮らし

いつか行ってみたかった場所、いつかやってみたかったこと。その「いつか」が「いま」となり、実行に移す日々を綴ったもの。

退職して思うこと(16)~最良の思い出

米国系企業に勤めて良かったこともたくさんあります。中でも一番の思い出は、米国のバンケットに招かれたことです。アメリカ文化に深く触れることができた貴重な経験です。


毎年、社員の中から選ばれてアワードが授与されます。高級リゾートホテルで2泊3日。午前中は外部ゲストの講演、午後はエクスカーション、夜はパーティーという流れです。もちろん交通費、食費はすべて会社負担で、ホテルはもちろん一人部屋です。


営業部門は、ハワイを初め海外リゾートに招待されます。我々、技術部門はそこまで華やかではありませんが、日本支社主催のアワードの場合は、北海道や沖縄などのホテルで開催されます。米国本社主催のグローバルな大型アワードになると、米国内のリゾートホテルです。アジアやヨーロッパ支社からの参加者にとっては、うれしい海外旅行になります。


私も何度か招待されましたが、中でも2000年代に部長職に昇進した直後に参加したフロリダのイベントは素晴らしいものでした。パームビーチにある Breakers (休暇者)という1896年創業の老舗高級ホテルを貸切にして行われました。

NASAの宇宙飛行士の講演があり、午後は数種類の観光ツアーの中から、フロリダの豪邸見学ツアーと国立公園ツアーを希望して参加しました。夜のフルコースディナー後で、サラ・ブライトマンのショウがあったのを憶えています。私もロングドレスを着て、深夜までダンスパーティーに興じました。


普段は難しい顔をして会議に参加している米国本社のCEOやエグゼクティブ達も、真っ赤なドレスやタキシードに身を包んで、シャンパン片手に会話を楽しんだり、バンドに合わせてスマートに踊っています。まるで映画のワンシーンのようでした。


疲れて部屋に戻ると、ベッドの上に水色のボックスのプレゼントが置かれていました。中身はティファニーのロゴが入った記念のガラス製品でした。


このようなグローバルの表彰イベントが毎年、どこかで設けられていて、社員の励みにもなっていました。日本企業に勤めていたら経験できなかったことでしょう。

2008年のリーマンショックを境に、経費削減がますます厳しくなり、in person で参加するイベントは次々に廃止になりました。米国本社には、表彰イベントを運営するための10名程度のチームがありましたが、全員解雇になりました。


替わりに、セカンドライフと呼ばれる仮想世界の中で開催されるイベントに、社員が皆、アバターで参加するという先進的な試みもありました。最近になって、コロナ感染症の影響でこのような仮想世界でのイベントも聞かれるようになりましたが、10年前ではさすがに時代に早すぎたようです。通信技術や ITインフラが十分に整わず、それ以上 広がることはありませんでした。


その後は世界中の社員が参加しての、SNSを使ったジャムセッションや動画を活用するイベントにシフトしていきました。予算の面で仕方ないのでしょうが、行ってみないとわからないこと、やってみないとわからないことが一杯あることを忘れないようにしたいものです。