女ひとり 定年退職後の日々の暮らし

いつか行ってみたかった場所、いつかやってみたかったこと。その「いつか」が「いま」となり、実行に移す日々を綴ったもの。

起業した理由

定年退職する数年前から、将来、起業することを考えていました。せっかくの人生、このまま会社員だけで終わって、起業を経験しないのはもったいないと思ったからです。具体的な宛があったわけではありません。最近、テレビや雑誌で、女性起業家の特集や記事をよく見かけるようになった影響かもしれません。とにかく一度、やってみたかったのです。

ただし退職金が目減りするのは避けたいので、開業にあまり費用がかからず、失敗時のダメージが少ないものでなければいけません。当時は、いったい何をどうやって始めたらいいのか、全く分かりませんでした。


最寄り駅から自宅マンションまで歩いてくる途中に、地元の商工会議所があって、ある日「起業家セミナー」のポスターを見かけました。毎週土曜日終日、計4回で受講料4千円。何かのヒントが見つかればという気持ちで、申し込みました。


受講者は、クッキー屋さんを開きたいという若い女性から、ジャズ喫茶をやりたいという定年退職したオジサンなど、全部で8名でした。それぞれ明確な目的でやって来る中、私はとりあえず会場で聞かれたので、とっさに ITコンサルタント希望ということにしました。

ただ、そのセミナーはちょっとレベルが低くて、期待どおりとは言い難いものでした。例えば、「ラーメン屋で家賃が月7万円、仕入れが月13万円です。定価800円のラーメンを何杯売れば、採算がとれますか?」というような講義です。「固定費20万円を賄うには、最低でもひと月250杯を売らないといけません。それだけの顧客が見込めるところに出店しましょう」。普通に考えても当たり前のことです。


最終日に、実際に起業した先輩方に、個別にゆっくりとお話をうかがう時間がありました。現在の私の職種とは異なりますが、やはり資格をとって個人事務所を開いている、SONYからの脱サラ組の男性に、具体的な起業方法や個人事務所のメリット・デメリットを詳しく伺いました。そのおかげで、修了したときには少し方向性が見えてきました。やはり動いてみるものですね。


あとは資格について調べて、自分の性格も含めて、条件が合いそうなものを探したという感じです。その仕事がしたいというよりも、起業することに興味をもったというのが正直なところです。開業するには種々の手続きや段取りが必要ですから、中には開業したことで満足してしまって、実際の仕事はしないままというケースもあるそうです。


事務所の屋号やロゴを考えて、名刺とホームページをデザインして、青色申告をマスターして‥、長く会社員をやってきたから、今度はイチから全部自分で作っていくのが楽しくもあります。さいわい開業したらすぐに小さい仕事の声がかかり、そろそろと歩き始めたところです。今度は定年がありません。ゆっくり着実に続けて行ければと思っています。